太陽光発電の売電は、事業にとって重要な収入源です。
しかし、売電制度は常に変化しており、事業者はその変化に迅速に対応する必要があります。
近年、注目されているのが、全量買取から余剰買取への制度変更です。
この変更は、事業者の売電戦略に大きな影響を与えます。
今回は、全量買取から余剰買取への変更について、その概要や影響、そして賢く対応する方法を解説します。
太陽光発電売電制度の変遷と現状
FIT制度導入から余剰買取への移行
2012年に導入されたFIT制度(固定価格買取制度)は、太陽光発電の普及を促進するために、一定期間、発電電力を固定価格で買い取る制度です。
当初は、多くの事業者が全量買取を選択していました。
発電した電力を全て電力会社に売電できるため、安定した収入が見込めたからです。
しかし、再生可能エネルギーの普及が進み、電力供給のバランスが変化するにつれて、制度の見直しが行われるようになりました。
特に、小規模な太陽光発電事業者に対しては、自家消費の促進を目的とした余剰買取への移行が推進されるようになりました。
全量買取と余剰買取の違い・対象となる事業者
全量買取とは、発電した電力を全て電力会社に売電する方式です。
一方、余剰買取とは、自家消費した後の余剰電力を売電する方式です。
制度変更以前は、一定規模以上の太陽光発電設備は全量買取が主流でしたが、2020年以降は、小規模な太陽光発電設備(10kW以上50kW未満)は原則として余剰買取に移行しました。
対象となる事業者は、主に小規模な太陽光発電事業者です。
大規模な太陽光発電事業者(50kW以上)は、引き続き全量買取を選択できるケースも多いですが、近年では自家消費比率の遵守などが求められるようになっています。
制度変更による影響と課題
全量買取から余剰買取への変更は、事業者の売電収入に大きな影響を与えます。
自家消費分を差し引いた後の余剰電力のみが売電対象となるため、売電収入は減少します。
また、余剰買取では、自家消費量を増加させるための設備投資が必要となる場合があり、初期投資負担が増加する可能性も考えられます。
さらに、電力需給の状況によっては、余剰電力が発生しない場合もあり、売電収入が不安定になるリスクも存在します。
余剰買取における利益最大化戦略
自家消費の重要性と蓄電池導入のメリット
余剰買取においては、自家消費の最大化が利益を上げるための鍵となります。
自家消費を増やすことで、売電する電力量を減らしつつ、電気代を削減できます。
蓄電池の導入は、自家消費を最大化するための有効な手段です。
日中に発電した電力を蓄電池に貯蔵し、夜間や電力需要が高い時間帯に利用することで、電力会社からの購入電力量を減らし、電気料金を削減できます。
また、災害時における非常用電源としても活用できるため、BCP対策としても有効です。
蓄電池の導入費用は初期投資として必要ですが、長期的な視点で見れば、電気料金削減効果や売電収入の減少分を補う効果が期待できます。
夜間電力活用によるコスト削減
多くの電力会社では、時間帯別料金制度を採用しており、夜間は日中に比べて電気料金が安くなっています。
夜間電力を活用することで、コスト削減効果を高めることができます。
蓄電池と組み合わせることで、夜間の安価な電力を蓄電池に充電し、日中に利用することで、電気料金の節約が期待できます。
その他有効な対策
余剰買取における利益最大化のためには、様々な対策を検討する必要があります。
例えば、省エネルギー対策による電力消費量の削減、太陽光発電システムの最適化による発電効率の向上などが考えられます。
また、電力需給の状況を常に把握し、売電戦略を柔軟に変更することも重要です。
近年では、電力取引市場への参加や、需給調整サービスへの参加なども検討できるようになってきています。
まとめ
全量買取から余剰買取への制度変更は、太陽光発電事業者にとって大きな転換期となります。
売電収入の減少という課題もありますが、自家消費の最大化や夜間電力活用、省エネルギー対策などを組み合わせることで、利益を確保することは可能です。
蓄電池導入などの初期投資が必要となるケースもありますが、長期的な視点でコスト削減効果を考慮し、適切な対応策を講じることで、事業の継続的な発展に繋げることが重要です。
事業規模や発電量、電力使用状況などを総合的に判断し、最適な戦略を策定することが求められます。
専門家のアドバイスを受けることも有効な手段の一つです。
常に制度変更の動向に注意を払い、柔軟に対応していく姿勢が、成功への鍵となるでしょう。